sjue アーティスト写真

sjue の新しいアーティスト写真を撮影しました。

sjue_2012_01.jpg

場所:
   代々木 路上
使用機材:
   Canon EOS 5D
   Canon 28-80/3.5-5.6 II USM
   Adobe Photoshop CS3

ボーカル やちこから、ある日突然 撮影依頼の電話をもらって、
いろいろ話を聞いたうちに出てきた主な課題は、
「『ついていきたくなるバンド』か『なにかしてあげたくなるバンド』」
「バンド少年だった頃の戸田が見て、『本物だ!』と思う感じ」
の写真、というところだったように記憶しています。

次の日には撮影だったので、
テーマを頭の中に具現化するまでの時間は すごく限られてたんだけど、
電車が代々木に着くまでに、なんとかモチーフがまとまりました。良かった...

それは、 sjue が音楽を紡ぐことに対する、
僕にとっての意味の再構築だったんじゃないかな、と思います。

あまり広い意味でなく、自分が見える範囲での主観的な世界は、
残念ながら 平たく言えばクソみたいな事柄ばかりリアルに見えていく一方の
悲しく、つまらないものです。

でも、そういう世界の中で sjue は、
どこまでも優しく、美しいものを生み出そうとしている存在だと感じていました。

それって、実は世の中にとってすごく意味深い、
大事なことなんじゃないかなあ、と。
なんとなく、冷たく固いリアリティの中で、
単にバンドという以上の枠から はみ出してきそうな sjue という存在のイメージが
今回のアーティスト写真の構想につながりました。


1枚の写真の中で表現しようとしたことは 2つです。

  • どこまでも冷たく固いリアリティ
  • その中の奔放さ

悲しい現実のただ中にいる人間を見ると、なんだか支えてやりたくなってしまう気持ち。
でも、その中で心底楽しそうに輝いていて、はかない輝きの続きを、また見たくなってしまう気持ち。


まず 全体的に、冷たく固いリアリティ、現実的すぎる感じを出したくて、
今回は、いわゆる HDR (High Dynamic Range) の写真を
Photoshop の機能ではなくて、手作業でレイヤーを重ねていく形で実現しました。

今回使ったレイヤーは 全部でだいたい 30枚くらいですが、
そのうち、背景の街並に 6枚使っています。
シャッタースピードを 6段階 1枚ずつ撮影して、
1枚ごとに適正露出と思われる部分を切り出して重ねています。

そのうえで、奔放さが CMY 3色のオーバーレイで
彼らの周りを跳ね回っていたらいいなあ、と思って、
sjue のメンバーひとりひとりに
とにかく動きのあるポーズを遊び半分な感じでとってもらって
その様子をとらえた写真を CMY 各色単色に変換して
奔放さがおぼろげに人の形を保って わき出しているような、
そんな写真を作りました。


あまり、1枚の写真に対して ここまで手を入れることは ほとんどないのですが、
今回は いろいろと気が向いて、空き時間に ちまちまと作っていました。
なかなか愛着のある写真になりました。