僕らの食器棚

我が家に食器棚がやってきた。

これまでは、一人暮らしのときに使ってた
スチールラックを流用してたんだけど
嫁が食器をどんどん増やすので収納の限界に達していた。
そもそも嫁は「流用」というのが嫌いなのだ。
食器は食器棚に!

では食器棚を買いましょうか、となったのだけど
その選び方に関しては
なかなか我々にしては珍しいくらいの夫婦げんかになった。

最初は、下北沢の古道具屋。
ちょっと古い食器棚っていいよねえ、なんて話をしてたはずなのに
最終的に嫁が買いたいと言い出したのは「本棚」。
良い質感だし食器棚として使うのも変じゃない、と主張する嫁に
でもホコリがたまりやすいから扉付きの食器棚が良い、と反論したが
嫁は一度こうと決めたら絶対に聞き入れない。

1週間悩んで、本棚でも良いかあ、と自分を納得させた頃に
じゃあ買おうか、と切り出したところ
嫁は今度は別のが欲しいと言い出す。

1週間悩んで、じゃあ別のでも良いかあ、と自分を納得させた頃に
嫁は今度は別のが欲しいと言い出したところでオレ限界。
ムキー


そんなある日、嫁が中古の良い食器棚を見つけたというので
嫁のセンスにまかせて、買ってきてもらった。

この食器棚が非常に良い。
あまりまじめに採寸していなかったのにも関わらず、
なぜか我が家のキッチンにぴったりおさまるサイズだった。作り付けみたいに!
扉付きで大きいし、食器も余裕で入る。
僕の理想でもあり、嫁の理想でもある、そんな奇跡の食器棚。

けんかまでしてしまう、終わりのないやりとりの末にも
互いの理想にたどりつけるものだなあ、と
桜咲く土曜の昼下がりに、嫁の隣で感慨にふけっていた。


北朝鮮がロケットを発射した、とTVが騒ぎ出したのは、そのときだった。
あの先についているのが核弾頭で、まっすぐ東京を目指していたならば
ようやくたどりつけた僕らの食器棚も灰になってしまうのだな、と
おだやかだけど悲しい、桜吹雪のような気持ちになったのだった。