満員のカレー屋で待ちぼうけのさなか。
有名になりすぎてしまったボーカルがいるバンドの、
ギタリストが歌う曲を好きになることが多いことを、思い出しました。
派手なバンドパフォーマンスとは一転して、内向的な優しい歌だったりするのです。
たとえば、ローリングストーンズのキース・リチャーズ。
たとえば、エアロスミスのジョー・ペリー。
寝て起きて食ってまた寝て、のどうしようもなく生気のない今日に
ふと頭をよぎったのは、ジョー・ペリーの方でした。
アルバム「NINE LIVES」のボーナストラックに、
ジョー・ペリーがリードボーカルを取る「Falling Off」という曲があります。
中年男特有の、朴訥としていてどこか悲しげな、年輪深い表情の曲なんですが、
サビの歌詞が「どんどんダメになっていく・・・」(タイトルそのまま)。
エアロスミスといえば、暗黒時代はさておいて文句なしに100万ドルアーティストのはずで、
大それたことさえしなければ何不自由ない生活が死ぬまで送れるはずなのに、
なぜ未だ、落ちていく不安を拭いきれずにいるのだろう。
初めて聴いた当時もわかりませんでしたし、
今でもわかりません。
僕の住むすぐ近くの、半世紀続いた家具屋さんが店じまいします。
何のせいなのかは本当のところよくわかりませんが、
確固たる品質のものを作り、売り続けていた昭和の人々が
なんだか得体の知れない(効率的ですらない)ものに駆逐されていく様は
どこまでも寂しいものです。
僕の住むところよりちょっと行ったところの、
きっとかつてはおしゃれですごくきれいだったに違いない、
今ではあちこちすすけているプラスチックのカフェに初めて行ったとき。
なんでもない豚の生姜焼き定食が「ポークのジンジャーランチ」って出てきたときの
(そしてレジの代わりになぜか古ぼけたiBookがあるあたり)、
あの背筋がどこまでも冷たくなる感覚が、
聖域のように喧伝される下北沢を着々と覆いつくしているように思います。
僕は下北沢を聖域だなんてこれっぽっちも思いませんが
(それもあってSave The 下北沢にはどことなく賛同していません)、
もう少しでいいから、確かなものが次の世に残ればいいのに、と思います。
確かなものなんて何もない、というのなら、
この世界は生きるにはあまりに寂しい。
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