「妄想少女M」PV作成の依頼を受けたものの、
それまでビデオ撮影すらまともにやったことのない僕としてはすごく悩みました。
◆ビデオカメラ
わからないなりに、業務用のカメラでできるだけ良い質感で撮りたいと思っていましたが
低予算で済ませるにはレンタルするしかないということや、
数ある業務用機の中で何がベストなのかということなど、
実際に機材をちゃんと手にしてみないとわからないようなことを、
カタログを見つめながらあーでもないこーでもないと悩む日々が続きました。
最終的に選んだのは、PanasonicのAG-DVX100でした。
24fpsプログレッシブでの撮影モードを持っていることと、フィルム的な質感を持たせる「シネライクガンマ」というモードが高い評価を得ていたことが決め手でした。
レンタル先も散々探した挙句、一晩で撮り切るならY.D.S.さんが一番安く借りられるということがわかり、お世話になることにしました。
結果として、とても良い質感が得られました。
モノクロの部分以外は、ほとんど調整していない素の状態のDVX100の画です。
◆ストーリー
PVらしさということで、彼らの音楽性に合ったストーリーを盛り込んでみることにしました。
先に作ったCMの世界観をふくらませるということで、
「流れ落ちていった大事なものが世の中に踏みつけにされてしまい、
自分でも一旦は捨てていってしまうけれど、やっぱり大事だということに気がついて拾いに行く。」
というストーリーをざっくりと考えました。
あとはさらにそれをふくらませるためにいろいろと小ネタを仕込みました。
・見て見ぬふりをするメンバー
・車に轢かれる写真
・取り戻した歌は星のように赤・青・黄に輝いていて、
冬のオリオン座大星雲、星の生まれる場所へと飛んでいく。
(岩沢由子さんの描いた、アルバム「シルバーストーリー」のジャケットをモチーフにしています)
・拾った写真を額に大事にしまう
これらのストーリーを考えた時点ではまだ、
このような特殊効果が僕のスキルで実現できるかどうかはわかっていませんでしたが、
それを言い出すときりがないので、考えたことはできるだけ実現するように心がけました。
◆撮影
2月上旬、まだまだ寒い冬の深夜、篠塚くん(Vocal & Guitar)の実家周辺で撮影しました。
彼の実家では納屋がちょっとしたリハーサルスタジオになっていて(通称「しのスタ」)、
演奏シーンはそこを使って撮影することになりました。
そのときすぐに出せるドラムセットがミニサイズのものしかなかったので、
撮影でもそのままミニドラムを使っています。
バンド全体の演奏シーンを、固定カメラと移動カメラの2パターン。
ひとりひとりの演奏シーンを1パターンずつ、合計3パターン。
さらに篠塚くんの演奏シーンをもう1パターン。
合わせて6パターン撮りました。
カメラが1台しかないので1パターンずつ撮らなくてはなりませんでしたが、
時間的な余裕はあったので問題ありませんでした。
その後、外に出てストーリー部分の撮影を行いました。
それなりに防寒の用意はしていたのですが、やはりかなり寒かったです。
深夜なので暗かったですが、DVX100のシャッタースピードを1/20くらいにすると
十分な露出が得られて大丈夫でした。
0時にスタートして4時に撮影終了。
僕は帰宅後、パソコンにデータを落としてからすぐにY.D.S.さんにカメラを返却に行きました。
◆編集
CMで使ったmoppi demopajaで完結できるかと甘く見ていたのですが、無理でした。
理由のひとつとして、demopajaは動画ファイルなどの素材を全てひとつのプロジェクトファイルにまとめるようになっているため、1曲分の素材を全て入れてしまうと処理が追いつかなくてパンクしてしまうことがありました。
手元の環境では400Mbytes程度までのプロジェクトファイルなら読み込んでくれましたが、700Mbytesあたりでは読み込み時に落ちてしまいました。
これはdemopajaがダメな設計のソフトというわけではなく、もともとdemopajaがこういう目的で作られたソフトなのでしょうがないことなんですが、動画中心の編集にはあまり向かないソフトということですね。
最終的なワークフローは以下のようになりました。
・特殊効果をかける最低限の部分のみaviutlで切り出す
・demopajaで静止画の素材と合成し、レンダリングする
・レンダリングした動画をUlead VideoStudio上で他の動画につなげる
最後の方の冬の星空のシーンですが、ただ写真を撮っただけでは満天の星空にならなかったので
同じ星空の写真を3枚ほど重ねています。
この写真は、Canon EOS D30にZenitar FISHEYE 16mm/F2.8をつけて撮りました。
あらかじめプロットを細かいレベルまで作りこんでいたので、
編集作業自体にはあまり時間はかからずスムーズに制作ができました。
できあがったPVは2月のドイツオレンジのワンマンライブで放映していただきましたが、
初めての割りには映像のクオリティが高かったのでかなり良い評価を得ることができました。
某氏に「うちで作ってるのよりいいねぇ」などと言われたとか言われなかったとか。
不安だらけだったので、嬉しかったです。
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